『あしながおじさん』 ジーン・ウェブスター

 おやすみ図書の18冊目は、チャーミングなこちらの物語に致します。

 

色んな方が翻訳していてそれぞれ素敵ですが、私は遠藤寿子さん翻訳の『あしながおじさん』が大好きです。

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あしながおじさん

ジーン・ウェブスター 著  / 遠藤寿子 訳

 

孤児院で育った少女ジューディは学課の成績がよく、また作文の才能を見込まれたことから「文学者になれるように」と大学に行けるよう支援してくれる人物が現れます。その支援の条件はたったひとつ、「文章を書く練習」を兼ねて、支援してくれる篤志家 "あしながおじさん"宛に1ヵ月に一度手紙を送る事。

そういう経緯があり、ジューディからあしながおじさんへ送るお手紙、という形で彼女の青春時代を追っていく物語です。

 

さて、「お手紙だけで構成されている物語」というだけで既に面白いのですが、主人公のジューディの書く手紙がとてもチャーミングで、読んでいるだけで頬が緩んでしまうんです。

 

彼女の快活な性格や、喜怒哀楽の心がそのまま飛び出てきたような言葉たち(遠藤寿子さんの翻訳の絶品さを体感していただきたい) は、なんだか手紙を書いているジューディの姿まで見えてくるようですし、それにジューディの大学生活の、なんと楽しそうなことでしょう!

それに何ともリアルなんです。

とても物語には思えず、ジューディが本当に実在する女の子であるかのように感じます。

私の場合、読み進める内に《擬似あしながおじさん》とでもいうような気持ちになって、ジューディからの手紙を(つまり読み進めることを)心から楽しみにする程でした。

 

そして、この物語はなんと!青春物語であると同時に恋の物語でもあるのです。ジューディのお手紙の中に、分かりにくくも隠しきれない可愛らしい恋心が滲んでいくのが、"擬似あしながおじさん"(=読者)として、たまらない気持ちになるのですよ。

個人的には、普段こんなにロマンチックなお話を読まないので、非常にドキドキして、血流が良くなる思いでした。

 

春夏秋冬どの季節に読んでも素敵な物語ですが、今のような肌寒い季節に読むのもいいなと思います。温かい部屋で彼女からのお手紙を読み進めるだなんて、きっと幸せでとろけるような気持ちになることでしょう。

有名な物語ですが、あらすじを知っているだけではわからない、宝物のような気持ちを与えてくれる本です。

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ちなみに「続あしながおじさん」という本もあります。そちらはジューディの学生時代の親友サリーが大活躍する物語。(こちらも全編お手紙で、とても面白いです!)

原題は「Dear Enemy (親愛なる敵へ)」(!)